タヌキ猫です。
国土交通省より度重なる飲酒事案
により事業改善命令および業務改善勧告を受けまして
2019年1月18日付で日本航空よりこれに対する報告
が発表となりました。
今回はその発表されました内容を一部引用しまして
記事としたいと思います。
事業改善命令に対する改善措置について
1. 事実の要因および改善すべき点
飲酒問題に係る要因と対策の概要
飲酒問題を、安全問題として捉えず、運航乗務員個人の自己管理
や規程遵守に係るコンプライアンスの問題として捉え、
組織的な対策を講じませんでした。
背景には、乗務12時間前の規定を守り、過度な飲酒でなければ
翌日の乗務には影響することはない、また、
過度な飲酒状態でアルコール検査をすり抜けて
乗務することはない、との思い込みがありました。
国内空港では新型アルコール検知器の配備後に
アルコール検知事案が発生していましたが、
新型アルコール検知器の海外空港への配備
を急がせることにはつながらず、JL44便での
不適切事案を未然に防ぐことができませんでした。
上記を踏まえ、飲酒問題は安全問題である
と認識したうえで以下の対策を行います。
飲酒対策を組織的に管理する体制の構築
アルコール検査と運航乗務員への処分の強化
飲酒に関する不適切事案を未然に防止する仕組みの構築
運航乗務員に対する意識改革の早急な実施
全社員(JALグループ全社員)に対する飲酒に関する
安全意識の再徹底ならびに法令
および規程などの遵守に係る教育
乗員編成の変更の判断が適切に
行われていない要因と対策の概要
運航の継続を重視し、安全運航を最優先とする意識が薄れていました。
運航の継続可否を決定する局面において、現場では
お客さまを目の前にして運航を完遂したいという思いが強く働き、
安全最優先の判断を鈍らせる要因になります。
今回の不適切事案でもこのような思いが、副操縦士の拘束という事態に際して、
安全上重大な判断が会社として適切に行われないまま、
現場で安易に乗員編成を変更して運航を継続することにつながりました。
安易な乗員編成の変更が安全に及ぼす影響と、
安全運航を最優先する意識の重要性を再認識し、以下の対策を行います。
予定された乗員編成の変更禁止
乗務割(乗員編成含む)変更の判断に係る規程の明確化
安全最優先の意識の再徹底
2. 法112条に基づく事業改善命令を受けた対策
飲酒対策の抜本的な再構築
(1)飲酒対策を組織的に管理する体制の構築
飲酒に関する不適切事案に係る情報収集、遅滞ない対策の実行、
対策実施状況の監視、および経営への報告を実施します。
カウンセリングなどにより個々の社員の飲酒問題の未然防止などを、
体系的かつ組織的に推進するため、安全統括管理者の責任と
権限のもとで運営する「アルコール対策特別委員会」を新設します。
またその下部組織として、各本部に「専門部会」を設置し、
飲酒対策の実務を担います。
(2)アルコール検査と運航乗務員への処分の強化
アルコール検査の強化
乗務前の検査にて呼気中のアルコール濃度が0.00mg/Lを
超える数値が表示された場合には不合格とし、乗務停止します。
乗務後にもアルコール検査を実施します。(2019年3月~)
全ての検知器を吹きこみ式に更新しました。(2018年11月26日)
検査には第三者が立ち合い記録保管の運用を開始しました。(2018年12月11日)
アルコール検査に係る規程を明確にしました。(2018年12月27日)
運航乗務員への処分の強化
運航乗務員としての資質に欠けると判断した場合には、
乗務資格を所定の期間停止します。
また就業規則に懲戒の対象となることを明記し
懲戒委員会において処分を決定します。
(3)飲酒に関する不適切事案を未然に防止する仕組みの構築
定期的に、関係部門がさまざまな視点
(アルコール検査・勤務変更・勤務中・健康管理)から
連携して評価、対応を検討することにより、対応の充実を図ります。
必要と判断された場合には、面談やカウンセリングなど
を行うことにより、飲酒に起因する不適切事案の発生を未然に防止します。
(4)運航乗務員に対する意識改革の早急な実施
教材を用いた自学習に加え、各職制乗務員のもと
飲酒問題に関する直接対話を実施します。
(5)全社員(JALグループ全社員)に対する飲酒に関する安全意識の
再徹底ならびに法令および規程などの遵守に係わる教育
自学習にて飲酒問題とアルコールに関する正確な知識を
習得するとともに、対話形式での意識確認と意見交換を行います。
飲酒と安全について社員として持つべき意識などの再徹底を実施します。
JALグループ全社員にアルコール検知器を個人貸与し、
飲酒による体内へのアルコール残量に対する
認識および飲酒問題に関する当事者意識を喚起します。
(6)対策実施状況の監視
安全推進本部が、上記(2)から(5)の
対策実施状況を確認し、改善状況を監視します。
乗員編成の変更禁止
(1)予定された乗員編成の変更禁止
規程の誤った解釈により、会社として適切に判断しないまま、
現場判断で安易に編成の変更が行われたことから、
予定された乗務編成の変更を禁止し、規程も改定しました。
(2)乗員編成以外の乗務割に係る権限の見直し
乗員編成の変更以外にも、現場判断で安易に変更が行われる余地
がないか見直しを行い、飛行勤務時間の延長に係る判断手順を明確にしました。
(3)規程への反映
乗員編成の変更を禁止することについて運航規程などに反映しました。
(4)安全最優先の意識の再徹底
「航空従事者の飲酒基準に関する検討会」中間とりまとめへの対応
「航空従事者の飲酒基準に関する検討会」における中間とりまとめ結果
にて、全運航乗務員を対象とした体内アルコール濃度の数値基準、
アルコール検知器を使用した乗務前後の検査の義務付けなど
の基準案が示されたことから、これらを参考に以下の飲酒対策を実施します。
(1)運航に影響を及ぼすと認められる体内アルコール濃度の明確化
(2)アルコール検査の義務化
(3)アルコール教育の徹底・依存症対応
経営者を含む全関係社員への定期的なアルコール教育を義務化
するとともに、依存症社員などの早期発見や対応のための体制を整備します。
(4)アルコール不適切事案を航空局報告に追加
(5)飲酒対策に係る体制の強化
安全管理規程を改定し、安全統括管理者の責務に飲酒対策を追加します。
(6)操縦士の意識改革に向けた取り組み
全運航乗務員を対象に定期教育を実施し、
意識確認や意見交換を実施します。(2019年4月~)
(7)飲酒事案のフォーローアップ体制の構築
不適切事案についての原因究明、再発防止を図るとともに、
アルコール検査の記録、不適切事案の収集、
分析および改善を図る仕組みを構築します。
安全文化を支える企業風土の醸成に向けて
今回の一連の不適切事案を受けた社内での検討を通じて、
個人あるいは会社として問題に直面した際に、
容易には解決できない問題や解決することで
都合が悪くなるような問題を、「範囲が限定されている」、
「特殊、稀なケースである」などと理由をつけて
影響を過小評価することで、真剣に向き合うことを避けるといった企業風土や、
安全最優先が徹底されていないこと、前例踏襲や横並び意識などの課題
もあると強く認識しました。
このような組織の本質的な課題に対して、社長を委員長として
設置した社内検証委員会にて、企業風土の改善に取り組みます。
また、当委員会では、客観的な視点も取り入れるため、
安全アドバイザリーグループから助言を得て検討を進めます。
業務改善勧告に対する措置について
1. 事例の発生要因および改善すべき点
これまで飲酒問題を安全問題として捉えず、
客室乗務員個人の自己管理や規程順守に係る
コンプライアンスの問題として捉え、
組織的な対策が講じられてこなかったことが要因と考えております。
その結果、2017年11月の当該客室乗務員による機内での飲酒事案
および2018年5月の客室乗務員による機内での飲酒事案が
あったにも関わらず、原因究明と再発防止が不十分であったことから、
2018年12月のJL786便での不適切事案を未然に防ぐことができませんでした。
上記を踏まえ、飲酒問題は安全問題であると認識した上で以下の対策を行います。
飲酒対策を組織的に管理する体制の構築
アルコール検査の強化
飲酒に関する不適切事案を未然に防止する仕組みの構築
客室乗務員に対する教育の実施
全社員に対する飲酒に関する安全意識の再徹底
ならびに法令および規程などの遵守に係る教育
2. 対策
飲酒対策を組織的に管理する体制の構築
アルコール対策特別委員会および専門部会を新設します。
(事業改善命令に対する改善措置と同様)
アルコール検査と処分の強化
アルコール検査の強化
アルコール検知器による検査において呼気中の
アルコール濃度0.00mg/Lを超える数値が表示された場合
は乗務させないこととします。
業務中の客室乗務員の相互確認において「酒精飲料、薬品」
の影響が疑われる場合は、会社に報告することを義務化します。
航行中および全ての到着便(当日最終便)を対象とした
乗務後のアルコール検査を実施します。
アルコール検査の実施にあたっては、検査の健全性を確保するため
客室乗務員相互で機器を換え1人2回確認を行い、
検査後には記録を作成し保管します。
処分の強化
客室乗務員を含む全社員を対象とした就業規則に、
酒精飲料の影響により運航に支障を生じさせた場合、
懲戒の対象となることを明記し懲戒委員会において処分を決定します。
この報告書には当面、乗務24時間前からの飲酒禁止に関する
記述はありませんでした。
ただいま、ブログで掲載しました内容は日本航空発表による
報告書の一部を抜粋したものですが…
ん~余裕がないんだよね
ゴチャゴチャ教育だなんだと詰め込んでも
変わりはしないですよね。
逆に、ゆっくりと体を休める時間をより充実させること
の方がどれだけ重要なことか
やはり今回の事案で印象に残ったのは
飲酒チェックを内々で相互確認していた点
に尽きると思います。
バス会社などの飲酒チェックの仕方を知っている
こともあって、航空会社ってこんなに甘いのか
と驚かされたところですからね。
今回の改定で乗務前と乗務後において
第三者を交えてのチェックとなったという
これだけでも、大きな成果になるだろう
と期待しています。
ただ、乗務24時間前からの飲酒禁止は反対です。
どうしても、今の世間の風潮からすれば、
随分と過去にさかのぼってのアラさがしに
ご執心なマスコミですが、
その先を見通せなければ何の意味もないですよね。
人間、縛りに縛られるといつか爆発しますよ
ただ、それを航空会社の体裁としては
大きくは言えないですよね。
今回の事案は事案として重く受け止めて頂かなければ
安全は到底担保できないものと思いますが、
かといって、なんでもかんでも過剰に反応するのではなく
しっかりと基礎(乗務前/乗務後の飲酒チェックを第三者を交えて)
を固めれば、防げるものと思います。
今回は、日本航空より発表のありました
事業改善命令および業務改善勧告を受けまして
の報告書について書いてみました。
タヌキ猫でした。